上橋菜穂子さんの「香君(下)遥かな道」を読みました。
上巻の「香君 西から来た少女」でも感想を書いたのですが、ようやく下巻にたどり着き、即、一気読みでした。
そして、しばらく、余韻に圧倒されました。
これは
人並み外れた嗅覚を持つヒロインが、その能力を使うことで、苦難を乗り越え、飢饉を防ぎ民衆や国を守るために、命がけで奔走するお話です。
ですが、ただヒロインが活躍するだけの単純な冒険物語では有りません。
この世界には
国の成り立ちがあり、政治があり、衣食住を支えるための労働があり、命に直結した農業があり、為政者にも、貴族にも、農民にも、それぞれの生い立ちがあり、それぞれの立場があり、考えがある。
現実世界では当たり前のことですが、
それでも、どうしたって人間は身びいきになり
自分の考えが正しくて
他の意見の者は悪者、としたくなるし
その方が物語を描く上では簡単です。
上橋菜穂子さんは
対立した立場のそれぞれの視点を描き
主人公にも単純に正解を与えません。
主人公が葛藤し、読者も同じように迷い、
何が大事なのか、どう決断するべきなのか、どうすれば道は開けるのか、
凡人なら投げ出したくなる状況を、それでも彼女はキリリと前を向いて立ち向かいます。
とてもとても、思慮深く、そして勇気があるのです。
く〜、カッコイイ!
上巻の時にも書きましたが
上橋菜穂子さんの作品のヒロインは、まず間違いなくカッコイイんです。
なぜなら彼女たちは、広い視野をもち、深い思慮のもと、困難であろうとも最善の道を選ぼうとするからです。
ここに来てついに、
彼女たちの思慮深さは、結局、作者である上橋菜穂子さんの思慮深さだと、私は思い至りました!
ファンの方はとっくに気づいていらっしゃったでしょうね…
すみません、浅はかで。
というわけで
作者である上橋菜穂子さんこそが、最強のヒロインなのではないでしょうか♥