間宮好さんの「母子月 神の音に翔ぶ」を読みました。
主人公は
孤児ながら天才子役として見出され、太夫としての地位を築いた女形の歌舞伎役者・二代目瀬川路京。
しかし、天に授けられた「神の音」が聞こえなくなり、踊りの精彩を欠き、人気も低迷。
現状打開の為に、
師匠である初代路京が舞台上で殺された因縁の演目「母子月」を打つことになり、改めて初代の死の真相に向き合うことになる。
というのがあらすじです。
時代物はあまり読まないのですが、このところ歌舞伎役者にまつわる物語を読むことが続いています。
歴史や権力争いよりも、舞台にかける情熱や人情のほうが私の心には響くんでしょう。
この物語にはさまざまな形の孤独が出てきます。
家族を失った孤独、人から疎まれ蔑まれる孤独、技量や才能が認められず他人を妬まずにはいられない孤独…
どんなに努力しても、どんなに善良であっても、どんなに貪欲でも、埋められない孤独です。
逆に、望んだ訳ではないのに
神から与えられたとしか言い表せない
美貌や才能というのも出てきます。
役者の世界のそれが、どれだけの価値であることか。
けれども、光り輝く者にしかわからない孤独もあるのです。
そんな孤独に向き合う登場人物たちに、
どうか幸せになって欲しいと
願わずにいられません。
世の中には、
マンガやアニメ、実写ドラマや映画など
物語を表現する手段はたくさんあって
それぞれに良さがあると思いますが
この小説を読んで
改めて「小説を読む楽しみ」を再認識しました。
それは、「想像する面白さ」です。
神が与えた美貌、天女のごとき華麗な舞、死に際に浮かべた初代の優しい微笑み、
そういった情景を
絶妙な描写の文章を読む事で
自分の胸の中にイメージを広げ思い描く面白さ。
絵が描けなくても、見たことがなくても、
文章が導いてくれる
私だけの美しい想像の世界。
それこそが、小説を読む楽しみだなぁと思わせてくれた作品でした✨